年長のI君が家に実っていた椿の実を持ってきて、
担任の先生にプレゼントしました。
それを見ていたA君はその椿の実が欲しくて仕方ありません。
そこで、A君は先生にその事を伝えると、
これはI君が先生にくれた物なので、
I君に聞いてみないとあげることはできなと伝えました。
それでもあきらめられないA君は、今度はI君に直談判しに行きます。
しかし、あれは僕が先生にあげたやつだから、
先生がいらないなら自分が持って帰るとA君の要求を断りました。
A君はそれでもあきらめられません。
今度はA君はI君を連れて先生の所までやってきて、
どうしても欲しいと訴えます。
そこで、先生はどうしても欲しいA君と
先生にもらって欲しいI君、二人に対して
一言だけ「どうしたらいいかな?」と問いかけます。
二人はそれぞれ自分の気持ちを訴え合います。
しばらく考えたI君が
「家にいっぱいあるからA君にあげていいよ。」
I君の口からこんな素敵な言葉が出てきました。
たった一粒の椿の実からこんな優しい言葉に
発展するとは思いもしませんでした。
もちろんA君の自分の気持ちを押し切ったことには
感心できませんが、それも子どもの特徴。
それと、先生が子ども達のトラブルに対して
頭ごなしに答えを押し付けず、辛抱強く待てた結果が
このようなI君の心の成長を後押ししたと思います。
とても優しいI君らしい言葉ですが、I君ばかりに
我慢させてしまった結果になってしまいました。
それをちゃんと理解している先生は
帰っていくI君を呼び止め、
「先生、とっても優しいI君が大好きだよ!」
と抱きかかえ、ぎゅーっとしました。
年長の男の子ともなるとちょっと照れくさく
「やめてー!」と体では拒否していましたが、
I君の表情はとっても嬉しそうでした。
今回の事は決して特別なケースではなく、
幼稚園ではよくあることです。
先生たちはその子の性格や年齢、その状況に応じて
できるだけ“見守り”、子ども達に解決させる事を大切にしています。
I君、担任の先生は椿の実をもらう以上に
あなたの優しい心が垣間見えたことが嬉しいと思いますよ。